nipa縮約・独立化説
主張10件
競合 マーティンの*pa再建に対して
大庭oponipaの後部成素がnipa>npa>ᵐbaと変化し、baの独立使用に至ったとする分析。
鈴木2010は複合語の年代分布とniwa・baの意味分化も扱う。
食い違う範囲: jpn/ba-place
マーティンは*paを場の前段階に置く。nipa縮約・独立化説は複合語内のnipaを出発点とし、
npa・ᵐbaを経てbaが独立した経路を立てる。両説の出発形と形成経路は一致しない。
鈴木2010はマーティン1987に言及せず、両者間の直接の論争は確認できない。
音韻変化 ●●○ 通説
鈴木は風間力三1975の説明として、niφa>nφa>mba>baという推移を引く。
風間は人名の大庭・饗庭と『倭名抄』の於保無波を中間段階の資料に挙げる。
風間1975の原文は未確認である。推移と資料は鈴木2010が引用する範囲で確認できる。
鈴木豊 2010-02 伝聞
niφa>nφa>mba>baのごとき推移をたどるのであろう。
- 文献
- 語頭濁音語「バ(場)」の成立過程について 論文/文京学院大学外国語学部文京学院短期大学紀要
- 立場
- 伝聞(他の説として伝えます)
- 箇所
- §2.3(p.135)
音韻変化 ●○○ 提案
鈴木は大庭oponipaの後部成素で狭母音iが脱落し、oponpaが生じたと推定する。
鈴木は表3の系列を「推定してみよう」と提示する。oponpaは上代の非知識人層に配される。
鈴木豊 2010-02 提唱
oponipa>oponpa
- 文献
- 語頭濁音語「バ(場)」の成立過程について 論文/文京学院大学外国語学部文京学院短期大学紀要
- 立場
- 提唱(その出典が言い出します)
- 箇所
- 要旨(p.133)および表3(p.147)
音韻変化 ●○○ 提案
鈴木はoponpaから前鼻音を伴うopoᵐbaが生じたと推定する。
表3はopoᵐbaを上代の知識人層に配し、濁音前鼻音を余剰特徴とする。
社会層と音韻解釈を含む鈴木自身の仮説にあたる。
鈴木豊 2010-02 提唱
oponpa>opo˜ba
- 文献
- 語頭濁音語「バ(場)」の成立過程について 論文/文京学院大学外国語学部文京学院短期大学紀要
- 立場
- 提唱(その出典が言い出します)
- 箇所
- 表3(p.147)
切断 ●○○ 提案
鈴木は大庭から後部成素baが取り出され、独立して使用されたことで語頭濁音語baが成立したとする。
鈴木は音変化の系列と『日本国語大辞典第二版』から抽出した複合語の初出分布を組み合わせて説明する。
独立語baの初出として挙げる『名語記』1275年の原文はこの項目で照合していない。
鈴木豊 2010-02 提唱
「オホバ」の後部成素を独立させた語であり
- 文献
- 語頭濁音語「バ(場)」の成立過程について 論文/文京学院大学外国語学部文京学院短期大学紀要
- 立場
- 提唱(その出典が言い出します)
- 箇所
- §1(p.134)
語義変化 ●○○ 提案
鈴木はbaがnipaの「何かを行うための場所」という意味を継承して抽象的な空間を表すようになり、
niwaは庭園の意味へ収斂したとする。
鈴木は『日本国語大辞典第二版』から-niha・-ba・niha-・ba-の複合語と初出年代を集計し、
語義の分化をこの分布と辞書記述から論じる。
鈴木豊 2010-02 提唱
「バ(場)」は本来「ニワ(庭)」がもっていた意味のうちの「何かを行うための場所」の意味を引きついでいる
- 文献
- 語頭濁音語「バ(場)」の成立過程について 論文/文京学院大学外国語学部文京学院短期大学紀要
- 立場
- 提唱(その出典が言い出します)
- 箇所
- §5.1(p.144)
音韻変化 ●●○ 通説
Merrillは日本語の有声阻害音の歴史を示す例として-nipa>-ᵐba>-ba「場所」を掲げる。
この記述はFrellesvig2010の40–43頁を参照する。
日本語の例は子音交替の類型論的概観に置かれた短い例示で、場の語史を独立に検討した箇所ではない。
Merrillが参照するFrellesvig2010のpp.40–43も確認した。この範囲は上代日本語の母音連続、連濁、
日琉祖語と上代日本語の音対応を扱うが、-nipa>-ᵐba>-baという個別系列は掲げない。
派生 ●●○ 通説
阪倉はバをニハ(庭)の転じたものとする一般の説を伝える。
阪倉は唱道者を挙げず、自らのマとの交替説に対する一般の見方として置く。
この項目の鈴木2010・風間1975・Merrill2018はいずれも同じ出発形を取り、
nipaから音の脱落と前鼻音化を経てbaに至る経路を具体的に示す。
阪倉篤義 2011 伝聞
ただし、バは、ニハ(庭)の転じたものと、一般には説かれている。
- 文献
- 増補 日本語の語源 書籍/平凡社ライブラリー729
- 立場
- 伝聞(他の説として伝えます)
- 箇所
- 補注*4、ダンプ頁360
切断 ●●○ 通説
宣長は、古い文献に場が大庭・馬場の形でしか見えないことから、ばをにはの音便とみる。
『玉勝間』の「はじめを濁る詞」の条。鈴木2010が研究史の起点として引き、鈴木自身の
「オホバの後部成素を独立させた語」という説明はこの観察を音韻史の系列に展開したものにあたる。
X上の「大庭由来」という言い方はこの系統の要約とみられる(c-oponipa-as-example)。
本居宣長 寛政7年〜文化9年(1795〜1812)刊;参照本は1938年の全集 提唱
場は、ふるくも大庭馬場などは見えたれど、たゞ場といへることは見えず、こはもとにはにて、大庭はおほには、馬場はうまにはなるを、音便にばといひなせる也
- 文献
- 玉勝間 巻十三 書籍/本居宣長全集 第8(本居豊頴校訂・本居清造再校、吉川弘文館、1938)
- 立場
- 提唱(その出典が言い出します)
- 箇所
- 巻十三「はじめを濁る詞」(本居宣長全集第8、吉川弘文館1938、NDL lab頁164)
鈴木豊 2010-02 伝聞
本居宣長は『玉勝間』(1795〜1812刊)の中で語頭濁音語について「後ノ世にこそ濁りていへ、古ヘはみな清ていへりし也」とし、「場は、ふるくも大庭 馬場などは見えたれど、たゞ場といへることは見えず、こはもとにはにて、おほには、うまにはなるを、音便にばとはいひなせる也」と述べている。
- 文献
- 語頭濁音語「バ(場)」の成立過程について 論文/文京学院大学外国語学部文京学院短期大学紀要
- 立場
- 伝聞(他の説として伝えます)
- 箇所
- §2.3(p. 135)
切断 ●●○ 通説
ba「場」はnipa「庭」の縮約(には>ば)である。
時代別国語大辞典上代編・角川古語大辞典・大辞林・新明解が国語辞典の通説として記し、阪倉2011も「一般には説かれている」と
伝える。典拠は本居宣長『古事記伝』巻12・『玉勝間』と荒木田久老『槻乃落葉』に遡り、宣長は大庭(意富婆)・馬場を、
久老は氏名の某婆とまほろばを証例に挙げる。かには>かばの類例(言海・Martin)が音形の縮約を支える。
日本国語大辞典の前身にあたる大日本国語辞典(1919)はば【場】にもには【庭】にも語源の注記を置かない。
この項目が確かめた範囲で説を載せる最も早い辞典は時代別国語大辞典上代編(1967)にあたる。
反証はアクセントで、Martinはniwaを2.1類(高起)、baを1.3類(低起・鹿児島B・首里baa B)に置き、
語形の直接の縮約では説明しにくい。baが後世の語だという反論は久老が「或人」の説として記す。
本居宣長 寛政9年(1797)刊;脱稿は寛政10年(1798) 提唱
凡て場と云は庭の略にて、大庭を意富婆と云類多し。又場字をも尓波と訓こともあり。何にまれ事を為す地を某場と云。さて某場を云ときは音便にて濁れども、もと尓波の略なれば波と清音なり。
- 文献
- 古事記伝 巻十二 書籍/古事記伝 44巻
- 立場
- 提唱(その出典が言い出します)
- 箇所
- 巻十二 阿須波神の注(四十七丁裏〜四十八丁表)
荒木田久老 成立は天明末〜寛政期(1780年代末〜1790年代、刊年未確認);参照本は1924年の翻刻 提唱
邇波の爾を略て婆といふは、音便の常なり。〈略〉人の氏に何庭とあるを多くは某婆といへり。何場と書る場の字を某婆とよむも爾波の略語なり。
- 文献
- 万葉考槻乃落葉 書籍
- 立場
- 提唱(その出典が言い出します)
- 箇所
- 巻三「虚見つ倭」の注(1924年翻刻本 NDL lab頁98)
上代語辞典編修委員会 1967 記述
公開データには引用本文を収録していません。
- 文献
- 時代別国語大辞典 上代編 辞典
- 立場
- 記述(そう書いてあります)
- 箇所
- には【庭】【考】(p. 546)
中村幸彦 1982-1999 記述
公開データには引用本文を収録していません。
- 文献
- 角川古語大辞典 辞典
- 立場
- 記述(そう書いてあります)
- 箇所
- ば【場】
松村明 1995; 第二版 伝聞
公開データには引用本文を収録していません。
- 文献
- 大辞林 第二版(MDX変換) 辞典
- 立場
- 伝聞(他の説として伝えます)
- 箇所
- ば【場】
新明解国語辞典(MDX変換、版不明) 記述
公開データには引用本文を収録していません。
- 文献
- 新明解国語辞典(MDX変換、版不明) 辞典
- 立場
- 記述(そう書いてあります)
- 箇所
- 場
英語版Wiktionaryの編集者 2026-08-24 記述
An alteration from {{inh|ja|ojp|sort=は'|庭|tr=nipa}}, modern {{ja-r|庭|にわ|[[garden]], [[yard]]}}.
- 文献
- 場 — Wiktionary, the free dictionary ウェブ資料/English Wiktionary
- 立場
- 記述(そう書いてあります)
- 箇所
- Japanese, Etymology 1
Martin, Samuel Elmo 1987 疑問
ba (?< *[] -n- pa, ?< *n[i]pa₂.₁). 'place'. L - 0-1[H]/0[U]-B x-B-x.
- 文献
- The Japanese Language through Time 書籍
- 立場
- 疑問(別の説に疑いを置きます)
- 箇所
- p. 390
上田万年 1915–1919 記述
には 庭(名)一邸内又は階前の平地の稱。〈略〉二邸内に、樹木を栽ゑ、築山・泉水など設けたる處。三物事を行ふところ。物事のある場處。〈略〉四波の靜かに平かなる海面。〈略〉
- 文献
- 大日本国語辞典 辞典
- 立場
- 記述(そう書いてあります)
- 箇所
- 第4巻 p. 36
大槻文彦 1889–1891 contextualizes
かば〔古名、かにはノ轉ナルかんばノ約〕
- 文献
- 言海 辞典
- 立場
- contextualizes(立場の定義なし)
- 箇所
- かば【樺】
提唱者 ●●○ 通説
「庭を婆というのは後世の語だ」という反論は久老が「或人」の説として記し、久老自身は退けた。
久老の記述による。久老も「或人」も年代や文献を挙げない。単独のbaの文証が遅いことはVovin 2010も「too late」と述べる。
荒木田久老 成立は天明末〜寛政期(1780年代末〜1790年代、刊年未確認);参照本は1924年の翻刻 伝聞
或人、庭を婆といふはやゝ後世の言なりといへれど、さにあらず。
- 文献
- 万葉考槻乃落葉 書籍
- 立場
- 伝聞(他の説として伝えます)
- 箇所
- 巻三「虚見つ倭」の注
Vovin, Alexander 2010 支持
J ba, no matter what is its ultimate origin, is certainly attested too late to support the comparison.
- 文献
- Koreo-Japonica: A Re-evaluation of a Common Genetic Origin 書籍
- 立場
- 支持(別の説を支持します)
- 箇所
- p. 94