語源項目

*kan-a-si

かなし・悲・哀・愛

編纂案 上代日本語 形容詞語幹 Frellesvig-Whitman転写

*kan-a-si(かなし・かなしぶ)の単語家族

資料横断で引く かなしかなしぶ
関係する語を引く ゆかし

単語家族と見出しの単位 3件

*kan-a-si「悲・哀・愛」かなし・かなしぶ provisional

阪倉2011はかなしをかぬから作られた形容詞とし、kanu〜kana+siと分析する。 *kan-a-siはこの分析の切れ目を明示した編集上の再建表記である。ONCOJはかなしぶをかなしからの派生とする。 うらがなしは、uraganasi.yamlのc-segと2件の語構成claimがかなしを第二要素とするため、この単語家族にも置く。

*kan-a-si 説内
言語
上代日本語
種別
語源形
品詞
形容詞語幹

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かなし 悲・哀・愛 文証
言語
上代日本語
種別
語
品詞
形容詞(シク活用)

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National Institute for Japanese Language and Linguistics 2021 記述
kanasi / adjective / dear, adorable; pitiful; sad
文献
Oxford-NINJAL Corpus of Old Japanese データセット
立場
記述(そう書いてあります)
箇所
lexicon.xml語彙素l007022
かなしぶ 悲 文証
言語
上代日本語
種別
語
品詞
動詞

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National Institute for Japanese Language and Linguistics 2021 記述
kanasibwi / verb / be sad
文献
Oxford-NINJAL Corpus of Old Japanese データセット
立場
記述(そう書いてあります)
箇所
lexicon.xml語彙素l030500a

語形0件

語形情報はありません。

語形の状態 文証 再建 編集 説内
主張の等級 定説 通説 提案 推測 疑義

語義2件

悲しい。いたましい。

National Institute for Japanese Language and Linguistics 2021 記述
pitiful; sad
文献
Oxford-NINJAL Corpus of Old Japanese データセット
立場
記述(そう書いてあります)
箇所
lexicon.xml語彙素l007022の語義2・3

いとしい。かわいい。

National Institute for Japanese Language and Linguistics 2021 記述
dear, adorable
文献
Oxford-NINJAL Corpus of Old Japanese データセット
立場
記述(そう書いてあります)
箇所
lexicon.xml語彙素l007022の語義1

諸説 1説/主張7件

兼ぬからの形成説(阪倉)

主張3件

かなしを動詞かぬ(兼ぬ)の語基にaと接尾語しが付いた形容詞とみる。基本義は求める対象が今ここに無いことから 生じる欠如・空虚の思いで、悲哀義と愛情義はその二面にあたる。うらがなしの切断から悲哀義が生じたとする 再帰接頭辞説(uraganasi.yaml、e-refl)とは、どちらの義が基本かで向きが逆になる。

派生 提案

阪倉は形容詞かなしを動詞かぬ(兼ぬ)から作られた語とみる(kanu〜kana+si)。

阪倉の語構成論に立つ分析で、動詞語基にaを添えて接尾語しを付ける型(やさし・いたまし・ゆかし・あたらし)に 並べる。*kan-a-siは阪倉のkana+siに共通語基*kan-の切れ目と再建標識を加えた編集上の表記である。 かぬの語義「併せる」「先を見込む」から、対象を自分に併せてしまいたい気持(愛し)と、併せ得ていないことによる 欠如感(悲し)を導く。ONCOJの関係欄にはkanasiとkaneの派生関係が無い。

阪倉篤義 2011 提唱
このように考えると、「かなし」という語の語源は、「かぬ(兼ぬ)」という動詞に求めることができそうである。
文献
増補 日本語の語源 書籍/平凡社ライブラリー729
立場
提唱(その出典が言い出します)
箇所
第二部5「悲哀と愛情」の節「かなし」の語源、ダンプ頁281
阪倉篤義 2011 提唱
このような意味の「かぬ」を基にして、九七―九八ページに説いたような方法で構成されたのが、「かなし」という形容詞であったと考えられる(kanu〜kana+si)。
文献
増補 日本語の語源 書籍/平凡社ライブラリー729
立場
提唱(その出典が言い出します)
箇所
第二部5「悲哀と愛情」の節「かなし」の語源、ダンプ頁282
語義の配当 提案

阪倉は万葉集の悲哀義(死をいたむ・離別・旅の愁い・無常孤独)を、求めるものが今ここに無いことから生じる空虚・孤独の思いに総括し、これをかなしの基本的な意義とする。

万葉集の用例の分類に基づく阪倉の解釈で、語義の中核を一つに置く。ONCOJは語義を三つ並べ、順序以外の 優先を示さない。

阪倉篤義 2011 提唱
要するに、「かなし」という情緒は、求めるものが今ここに欠如して、無いことから生じる、空虚・孤独の思いを言うものであった。
文献
増補 日本語の語源 書籍/平凡社ライブラリー729
立場
提唱(その出典が言い出します)
箇所
第二部5「悲哀と愛情」の節「無常孤独の思い」、ダンプ頁266
同一性 提案

阪倉は悲哀義と愛情義のかなしを一つの語の二面とみる。共に居たい相手に離れてある孤独と、その相手を求める激しい愛情がひと続きにあることを、巻二十・四四三二の2例の並存から読む。

語義の連続を用例から説く解釈で、ONCOJが一つの語彙素に三つの語義を置くことと合う。

阪倉篤義 2011 提唱
しかしながら、この二つの「かなし」が、別の語でないこともまた、当然考えられる。
文献
増補 日本語の語源 書籍/平凡社ライブラリー729
立場
提唱(その出典が言い出します)
箇所
第二部5「悲哀と愛情」の節「空虚の思い」、ダンプ頁277

収録されている語源説は1件です。

その他の主張4件

用例の同定 提案

阪倉は万葉集のかなしを100例と数え、悲・哀・憐で書く43例と仮名書き22例の計65例を悲哀義、仮名書き35例を愛情義とする。

阪倉の数え方は用例の語義判定を含むため、ONCOJの語彙素の111例とは対象が一致しない。愛情義35例の 歌番号一覧はダンプ頁269にある。ONCOJの用例ごとの語義付与は行っていない。

阪倉篤義 2011 記述
『万葉集』中、「かなし」という語は全部でちょうど一〇〇例用いられている。
文献
増補 日本語の語源 書籍/平凡社ライブラリー729
立場
記述(そう書いてあります)
箇所
第二部5「悲哀と愛情」の節「無常孤独の思い」、ダンプ頁264
阪倉篤義 2011 記述
「愛しい」の意味の「かなし」という語の例は『万葉集』中に全部で三五例あって、すべて仮名書きされていることになるが
文献
増補 日本語の語源 書籍/平凡社ライブラリー729
立場
記述(そう書いてあります)
箇所
第二部5「悲哀と愛情」の節「愛し」の意味の「かなし」、ダンプ頁269
National Institute for Japanese Language and Linguistics 2021 記述
文献
Oxford-NINJAL Corpus of Old Japanese データセット
立場
記述(そう書いてあります)
箇所
語彙素l007022を指す用例111件(うち仮名書き68件)
usage 提案

阪倉は、愛情義のかなしが万葉集では巻十四の東歌と巻二十の防人歌に集中し、それ以外の3首のうち2首は悲哀義とも読めるとして、この義を東国方言または俗語とみる。家持の巻十八・四一〇六と巻二十・四四〇八は俗語を歌語に採った例と説明する。

分布の偏りは阪倉が挙げる歌番号から読み取れる。方言か俗語かの判定は阪倉の解釈で、家持の 俗語採用癖は補注34で別に論じる。ONCOJは語彙素に東国語の注記を付けない。

阪倉篤義 2011 提唱
すなわち、「かなし」という語を「愛しい」の意味に用いるのは、少なくとも『万葉集』では、一般の歌語ではなくて、東歌や防人歌にだけ用いられる東国方言であったらしい。
文献
増補 日本語の語源 書籍/平凡社ライブラリー729
立場
提唱(その出典が言い出します)
箇所
第二部5「悲哀と愛情」の節「東国方言として」、ダンプ頁274
語義変化 提案

阪倉は、かなしが中世以降「みじめで情ない」「かなわない」を経て貧しさを言うようになった経緯を、欠乏感を言う語源的な意味からの展開とみる。

用例の並べ方と方向づけは阪倉の解釈で、勝事→笑止の変化と逆向きの例として位置づける。

阪倉篤義 2011 提唱
「貧し」の意を表わして〈ことざま〉的にも用いられるにいたった経緯がたどれるであろう。
文献
増補 日本語の語源 書籍/平凡社ライブラリー729
立場
提唱(その出典が言い出します)
箇所
第二部5「悲哀と愛情」の節「男の「かなしさ」」、ダンプ頁295
阪倉篤義 2011 提唱
「かなし」という語によって「貧しさ」が意味されるようになったのは、実はこの語の、欠乏感をいう語源的な意味からの展開であったということである。
文献
増補 日本語の語源 書籍/平凡社ライブラリー729
立場
提唱(その出典が言い出します)
箇所
第二部5「悲哀と愛情」の節「男の「かなしさ」」、ダンプ頁297
派生 通説

阪倉はゆかしを動詞ゆく(行く)から作られた形容詞とみる(yuku〜yuka+si)。「そこへ行きたい気がする」が「見たい・知りたい」に転じたとする。

行くとの関係は辞書類にも見える説明で、阪倉はかなしと同じ型の例として挙げる。

阪倉篤義 2011 記述
「ゆかし」は、「ゆく(行く)」という動詞を基にして構成された形容詞であった(yuku〜yuka+si)。
文献
増補 日本語の語源 書籍/平凡社ライブラリー729
立場
記述(そう書いてあります)
箇所
第二部5「悲哀と愛情」の節「行く」→「ゆかし」、ダンプ頁284

単語家族の成員4件

語根拠
*kan-a-sic-kanu-derivation
かなしc-kanu-derivation
かなしぶONCOJの語彙素l030500aが関係欄でkanasiからの派生とする。
うらがなしuraganasi.yamlのc-segがかなしを第二要素とする切れ目を立て、c-comp-heartとc-comp-reflが同じ単位を入力に置く。

関連する単位1件

ゆかし 文証

見たい・聞きたい・知りたい気がする。心ひかれる。

阪倉1978は『枕草子』一五九段の「とくゆかしきもの」を例として挙げる。DCCJの語彙素との照合は済んでいない。

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用例0件

用例はありません。

外部データベース2件

語誌情報ポータル(語誌データベース) 国立国語研究所

悲しい/カナシイ/形容詞-一般の項に研究文献22件(1952–1983)が登録されている。 阪倉篤義(1978)「〈かなし〉の意義」はその一つで、本書第二部5の元になった論とみられるが未見。

https://goshidb.ninjal.ac.jp/goshidb/word.php?goiso=悲しい&reading=カナシイ&hinshi=形容詞-一般

oncoj

語彙素l007022。派生のkanasibwi(l030500a)が関係欄で結ばれる。

https://oncoj.ninjal.ac.jp/cgi-bin/lexicon.sh?lemma=l007022