兼ぬからの形成説(阪倉)
主張3件
かなしを動詞かぬ(兼ぬ)の語基にaと接尾語しが付いた形容詞とみる。基本義は求める対象が今ここに無いことから 生じる欠如・空虚の思いで、悲哀義と愛情義はその二面にあたる。うらがなしの切断から悲哀義が生じたとする 再帰接頭辞説(uraganasi.yaml、e-refl)とは、どちらの義が基本かで向きが逆になる。
阪倉は形容詞かなしを動詞かぬ(兼ぬ)から作られた語とみる(kanu〜kana+si)。
阪倉の語構成論に立つ分析で、動詞語基にaを添えて接尾語しを付ける型(やさし・いたまし・ゆかし・あたらし)に 並べる。*kan-a-siは阪倉のkana+siに共通語基*kan-の切れ目と再建標識を加えた編集上の表記である。 かぬの語義「併せる」「先を見込む」から、対象を自分に併せてしまいたい気持(愛し)と、併せ得ていないことによる 欠如感(悲し)を導く。ONCOJの関係欄にはkanasiとkaneの派生関係が無い。
阪倉篤義 2011 提唱
このように考えると、「かなし」という語の語源は、「かぬ(兼ぬ)」という動詞に求めることができそうである。
- 文献
- 増補 日本語の語源 書籍/平凡社ライブラリー729
- 立場
- 提唱(その出典が言い出します)
- 箇所
- 第二部5「悲哀と愛情」の節「かなし」の語源、ダンプ頁281
阪倉篤義 2011 提唱
このような意味の「かぬ」を基にして、九七―九八ページに説いたような方法で構成されたのが、「かなし」という形容詞であったと考えられる(kanu〜kana+si)。
- 文献
- 増補 日本語の語源 書籍/平凡社ライブラリー729
- 立場
- 提唱(その出典が言い出します)
- 箇所
- 第二部5「悲哀と愛情」の節「かなし」の語源、ダンプ頁282
阪倉は万葉集の悲哀義(死をいたむ・離別・旅の愁い・無常孤独)を、求めるものが今ここに無いことから生じる空虚・孤独の思いに総括し、これをかなしの基本的な意義とする。
万葉集の用例の分類に基づく阪倉の解釈で、語義の中核を一つに置く。ONCOJは語義を三つ並べ、順序以外の 優先を示さない。
阪倉篤義 2011 提唱
要するに、「かなし」という情緒は、求めるものが今ここに欠如して、無いことから生じる、空虚・孤独の思いを言うものであった。
- 文献
- 増補 日本語の語源 書籍/平凡社ライブラリー729
- 立場
- 提唱(その出典が言い出します)
- 箇所
- 第二部5「悲哀と愛情」の節「無常孤独の思い」、ダンプ頁266
阪倉は悲哀義と愛情義のかなしを一つの語の二面とみる。共に居たい相手に離れてある孤独と、その相手を求める激しい愛情がひと続きにあることを、巻二十・四四三二の2例の並存から読む。
語義の連続を用例から説く解釈で、ONCOJが一つの語彙素に三つの語義を置くことと合う。
阪倉篤義 2011 提唱
しかしながら、この二つの「かなし」が、別の語でないこともまた、当然考えられる。
- 文献
- 増補 日本語の語源 書籍/平凡社ライブラリー729
- 立場
- 提唱(その出典が言い出します)
- 箇所
- 第二部5「悲哀と愛情」の節「空虚の思い」、ダンプ頁277