阪倉の「ひらける」説
主張7件
閉じふさがったものが開ける意の動詞ハルを立て、その名詞化として季節名ハルを説く。 同じ語基から原ハラ・墾りハリを、語中母音の交替から開くヒラクを結び付ける。
阪倉は、名詞ハル(春)をハルという動詞概念がそのまま名詞化したものとみる。
動詞の意義から季節名を導く論で、音形の対応そのものは論じない。 ONCOJは名詞paru(250例)と動詞pare(2例)を別語彙素に立て、両者を結ぶ注記を置かない。 精選版日国のはる【春】は語源欄も語誌欄も持たない。
阪倉篤義 2011 提唱
そこで、たとえばハル(春)という名詞は、いわば、ハルという動詞概念が、そのまま名詞化したものであったと考えられる。
- 文献
- 増補 日本語の語源 書籍/平凡社ライブラリー729
- 立場
- 提唱(その出典が言い出します)
- 箇所
- 第一部3「語源の考え方」の節「「春」の語源」、ダンプ頁118
阪倉は、ハル(晴る)の本来の意義を、閉じふさがっていたものがなくなってあたりが開けた状態になることとみる。
雲霧に限らない用法(気がはれる)を根拠に、より広い意義を本来のものとする。 ONCOJはこの動詞の語義を「clear up」とだけ記す。
阪倉篤義 2011 提唱
一般に、閉じふさがっていたものがなくなって、あたりが開けた状態になることを言うのが、その本来の意義である。
- 文献
- 増補 日本語の語源 書籍/平凡社ライブラリー729
- 立場
- 提唱(その出典が言い出します)
- 箇所
- 第一部3「語源の考え方」の節「「春」の語源」、ダンプ頁118
阪倉は、農耕生活者にとって閉じふさがれた冬が終わる季節を「万物が開けるとき」としてハルと呼んだとみる。
季節名の動機づけを農耕生活の対比に求める説明で、語形の証拠は伴わない。
阪倉篤義 2011 提唱
そういう季節を称して、「万物が開けるとき―ハル」と呼んだのである。
- 文献
- 増補 日本語の語源 書籍/平凡社ライブラリー729
- 立場
- 提唱(その出典が言い出します)
- 箇所
- 第一部3「語源の考え方」の節「「春」の語源」、ダンプ頁120
阪倉は、ハルをハラとの末尾母音交替のほかヒラとも関連づけて考える。
原・開の語との音形の近さを根拠とする。ONCOJはpara(l051723、field, plain、151例)と pirak(l031501a、open t、19例)を別語彙素に立て、これらを結ぶ注記を置かない。
阪倉篤義 2011 提唱
このように考えると、ハルは、ハラとの末尾母音の交替が考えられるだけではなしに、また、ヒラとも関連づけて考えられそうである。
- 文献
- 増補 日本語の語源 書籍/平凡社ライブラリー729
- 立場
- 提唱(その出典が言い出します)
- 箇所
- 第一部3「語源の考え方」の節「「春」と「開く」」、ダンプ頁121
阪倉は、Far-u〜Far-a〜Far-iを共通語基Far-への接尾母音の交替、Fara〜Firaを語中母音の交替とし、語基Fa/ir-を想定する。
二種の母音交替を重ねて語基を抽出する分析で、交替の条件や同型の語例の一覧は この箇所に置かれない。墾りpari(ONCOJはl031456bにpariを立てる)は文証形だが、 Far-の語基そのものは文証されない。
阪倉篤義 2011 提唱
先に考えてきたのが、Far-u〜Far-a〜Far-iというような、共通の語基Far-に接尾する母音の交替であったのに対して、これは、Fara〜Firaという、語中の母音の交替関係で、ここから析出される語基としては、Fa/ir-のようなものが想定されよう。
- 文献
- 増補 日本語の語源 書籍/平凡社ライブラリー729
- 立場
- 提唱(その出典が言い出します)
- 箇所
- 第一部3「語源の考え方」の節「「春」と「開く」」、ダンプ頁122
阪倉は、ハルとヒラクの意味の相違がaとiとの母音の差によって示されていたとみる。
母音の差に意味の差を担わせる主張で、同じ対立を示す他の語対をこの箇所に挙げない。
阪倉篤義 2011 提唱
ハルに、はなはだ近いが、そこに多少の意味の相違があり、その相違が、aとiとの母音の差によって示されていたのであろう。
- 文献
- 増補 日本語の語源 書籍/平凡社ライブラリー729
- 立場
- 提唱(その出典が言い出します)
- 箇所
- 第一部3「語源の考え方」の節「「春」と「開く」」、ダンプ頁122
阪倉はハル(春)を「ひらく」「ひらける」の意味の動詞「開ル、晴ル」から構成されて「万物のひらける時」を意味した名詞とみる。
増補の章が同じ説を要約した箇所で、第一部の論と内容が一致する。 動詞の側の表記を「開ル、晴ル」と併記し、両者を一語として扱う。
阪倉篤義 2011 提唱
たとえば、ハル(春)という名詞は、「ひらく」「ひらける」の意味の動詞「開ル、晴ル」から構成されて、「万物のひらける時」を意味したがごときである。
- 文献
- 増補 日本語の語源 書籍/平凡社ライブラリー729
- 立場
- 提唱(その出典が言い出します)
- 箇所
- 増補「語源――「神」の語源を中心に」の節「六 カミの成立」、ダンプ頁440